東京大学先端科学技術研究センターの油谷浩幸教授を中心とするグループでは、DNAマイクロアレイを用いたRNAの網羅的解析であるトランスクリプトーム解析を系統的に実施しています。この解析から、肝臓がん組織と正常組織の比較からがんに特異的に発現する遺伝子を捉えることに成功しています。その中の1つの分子がグリピカン3でした。
グリピカン3は、細胞膜表面上に存在する約60kDaの糖タンパク質で、グリコシルフォスファチジルイノシトール(GPI)アンカーにより細胞膜に結合しています。トランスクリプトーム解析から、グリピカン3遺伝子が胎児期の肝臓と肝癌細胞において高発現していることが確認されました。
グリピカン3の動態、構造解析のため、様々な部分を認識する抗体を作製しました。これらの抗体によって、筆宝らは、グリピカン3のN末端領域が可溶性タンパク質グリピカン3(sGPC3)としてがん組織から遊離し、血中に循環するタンパク質断片となることを発見しました。さらに、sGPC3が肝がんの早期診断に有効な新規血清マーカーとして利用されうることも合わせて報告しています*1。
さらに、エピトープ異なる複数の抗体を用いて、各種病理標本で組織染色を行った結果、グリピカン3は肝がん組織に発現している一方で、成人正常肝臓、肝炎および肝硬変の組織には発現が認められなかったことから、組織染色を用いた肝がんのモニタリングにグリピカン3が有用であることも報告されています*2。
Reference:
*1 Cancer Res. (2004) 64(7): 2418-23
Identification of Soluble NH2-Terminal Fragment of Glypican-3 as a Serological Marker for Early-Stage Hepatocellular Carcinoma.
*2 Mod Pathol. 2005 Dec;18(12):1591-8.
The glypican 3 oncofetal protein is a promising diagnostic marker for hepatocellular carcinoma.
|